所得税・法人税等

所得控除だけじゃない! 所得移転に有効な小規模企業共済!|法人から個人への所得移転⑩


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退職所得のバリエーションを増やす方法

前回、「役員退職慰労金」(退職所得)は、多額の税額控除が適用されて、税率も分離課税のうえ、社保も免除されるという非常に優れた節税&所得移転の手法であることを説明しました。

しかし、退職所得はその名の通り退職することで受け取れるものなので、原則として会社から1度だけしか支給されないものです。

複数法人を経営しているのであれば、それぞれの法人から退職慰労金を受け取ることができるのですが、1法人のみの場合は退職所得は一度しか享受することができないのでしょうか。

実は「小規模企業共済」と「iDeco」を利用することで、退職所得を複数回、受けとることが可能になります。

今回はそのうち小規模企業共済について説明します。

小規模企業共済とは
小規模企業共済は下記のようなものです。


小規模企業の経営者や役員の方が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる「小規模企業共済制度」。掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットに加え、事業資金の借入れもできる、おトクで安心な小規模企業の経営者のための「退職金制度」です。

独立行政法人 中小企業基盤整備機構
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/index.html


税務的には下記のような効果があります。

掛け金の支払時: 支払った金額分だけ所得控除されて個人の所得が下がり、所得税・住民税が減少する。

受取時(一括で受取): 受け取った額について退職所得で課税される

受取時(分割で受取): 分割で年金のように受け取る場合は、「公的年金等の雑所得」として一定の所得控除を引かれた上で総合課税される。

支払時は所得税(住民税)を下げる効果が受けられ、積み立てた掛け金を受け取る時には退職所得が適用されることで節税になります。(=キャッシュアウトを伴う節税)

この小規模企業共済に加入することで、法人からの退職金以外にも退職所得を受けることができるのです。また、個人事業主でも加入できるため、個人事業主向けの退職金制度という側面もあります。

小規模企業共済のメリット
①掛け金が所得控除になる。法人の場合は非課税で個人への所得移転に使える。(ただし社保は増える)
毎月最大7万円(年間84万円)まで掛け金を拠出し、同額を個人の確定申告で所得控除できます。なお、所得税は減少しますが社会保険料の削減にはつながりません

法人の場合、役員に加入させて会社が掛け金と同額を給与の上乗せとして支払うと、法人としては給与で損金算入できるし、個人の側でも同額の所得控除を受けられるので実質、所得税・住民税が非課税で個人にお金(積立金)の移転ができます

ただし、この方法の場合、額面給与が増えることになるので社会保険料が増加する可能性があります。個人事業主の場合も同様に、所得税(および住民税)を減らす効果はあれど国民健康保険料を減らす効果はありません。

②貸付制度が利用できる。
無担保、保証人不要、無審査(!)。金利は原則1.5%。(場合によっては0.9%) 金額は積立てている金額の範囲内(掛金の7割~9割、最大2,000万円)で貸付期間は最大50か月となります。

経営セーフティ共済の貸付制度が1年(12か月)なのに対して、小規模企業共済の貸付制度の期間はかなり長いので柔軟に使えます。

また、返済方法も「6か月ごとの元金均等割賦償還」と、資金繰り的にも優しい制度になっています。

(独立行政法人 中小企業基盤整備機構 貸付制度について)

③受取時、税制的に優遇される
上記の通り、一時金として受け取る場合は退職所得、分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得」として、税制的に有利な課税となります。

④相続対策に使える
小規模企業共済に入った状態で死亡してしまった場合は、積立てたお金が遺族に一時金として支払われることになりますが、その場合は死亡退職金」として「500万円×法定相続人の数」の相続税の非課税枠が適用できます。

小規模企業共済には決まった「満期」がなく、自分が退職(廃業)した時期が払い戻しの時期となります。逆に言えば、あえて小規模企業共済に加入し続けておくことで、相続人に対して「500万円×法定相続人の数」の非課税枠つきの相続財産を渡すこともできるということです。

iDecoと違って加入する時期の年齢制限もなく、60代以降になってからでも加入することができるので、相続対策の幅が広がります。

ちなみに「500万円×法定相続人の数」は死亡保険金についても同様の枠があるので、これを併用することで、「1,000万円×法定相続人の数」という非課税枠を追加で作ることができます。

⑤掛け金は差し押さえの対象外
小規模企業共済に拠出したお金は自己破産しても差し押さえされません。
将来の保証がないというのが自営業の弱点の一つですが、小規模企業共済であれば事業に失敗して破産しても債権者に持っていかれない退職金を確保することができます。(合法的に「財産隠し」ができる)

小規模企業共済のデメリット
①加入後20年を経ずに解約すると元本割れする
加入から20年(240か月)未満で任意解約をすると、返ってくる金額が掛け金総額を下回ります。

それでも支払時に所得控除、受取時には退職所得という税務メリットは享受できているので、大損はしないでしょう。

ちなみに、あくまで小規模企業共済を「任意解約」する場合であって、退職・廃業する場合であれば20年未満であっても元本割れはしません。例えば、フリーランスの人が個人事業を廃業してサラリーマンになるために、小規模企業共済を解約する場合などは元本割れする心配はありません

②掛け金を減額すると、その減額分は運用されない
小規模企業共済の掛け金は1,000円~7万円(年間最大84万円)の範囲で設定して毎月支払いとなりますが、その掛け金は年間1%の予定利率で運用されます。

もし資金繰りが苦しくなって毎月の掛け金の拠出額を減らした場合、その減額した金額(それまで積み立てた金額相当分)について運用、それ以降の運用がストップします。
毎月の拠出金は無理のない範囲で設定しましょう。

③サラリーマン大家は加入できない
加入資格がない例」に、

アパート経営等の事業を兼業している給与所得者(法人または個人事業主と常時雇用関係にある方)

とはっきり書かれてしまっているので、サラリーマン大家さんは加入できません

会社員退職済の個人事業主や、専業の法人役員として給与を受け取っている場合は加入できます。

不動産投資家に小規模企業共済はいらない?
不動産投資家は、収益物件といういわば高利回りの年金を自前で持っているので、将来の年金や退職金といった性質の小規模企業共済は不要と考える人もいるかもしれません。

確かに、小規模企業共済の積立金に対する運用利率は1%と、収益不動産に比べて低いので、運用という側面だけを考えたら合理的ではないかもしれません。

しかし、小規模企業共済を年金ではなく「退職所得による節税(=キャッシュアウトを伴う節税)」および「法人から個人への所得移転」と考えるとその価値が見えてきます。

法人で利益を出しても個人に移転するまでは自由に使えるお金ではないので、「お金を稼ぐ方法(ビジネス)」とは別に「法人で損金にしつつ、できるだけ少ない税負担で個人にお金を移転する方法(法人から個人への所得移転)」を考えなければなりません。
そこで後者に役立つのが小規模企業共済やiDecoなのです。

もちろんそれを理解した上で、小規模企業共済等の積立ではなく、そのお金をさらに運用利回りの高い収益不動産に回して、相応の社保・税負担を覚悟で役員報酬で個人に回収する、というのも一つのスタンスです。

ただ、月々の掛け金の上限は7万(年間84万)とそこまで多額ではないので、事業と並行して「個人へ移すお金を貯金する」感覚で小規模企業共済をやってもよいと思われます。

実際、どれくらい得するの?
下記の中小機構のシミュレーションサイトで掛け金と年数、受取時の年齢等を入力すると、受け取れる共済金の金額の試算ができます。
https://www.smrj.go.jp/skyosai1/simulator/result.php

「40歳~70歳まで30年間(360か月)、毎月7万円の掛け金を拠出し、70歳で共済金を受け取る」等の試算をしてみると、「70歳で受け取れる共済金が30,436,000円」と表示されます。

「掛け金拠出総額が25,200,000円(7万×360か月)、この金額が所得控除として総合課税の税率分が個人の節税になって、70歳で受け取れる共済金が30,436,000円、これが退職所得として課税されて…」というように節税できる金額をシミュレーションしてみましょう。

総合課税の税率が人によって異なるので税金への影響額は各自で計算頂くか顧問税理士に計算してもらう必要がありますが、小規模企業共済の運用益と節税効果の大きさによるメリットが実感できると思います。

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(次回、「iDecoも退職所得を享受できるがちょっとクセが強い|法人から個人への所得移転⑪」に続く)