消費税

賃貸住宅はインボイスがあろうがなかろうが仕入税額控除できない…!?|インボイス⑤

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※消費税の用語について、下記の用語集のページでざっくり解説しています。もし用語が分からなくなったらこのページを参照してください。


インボイス制度の不動産投資家への影響
前回、インボイス制度によって「免税事業者から仕入(モノ、サービスの購入)をすると、仕入税額控除ができなくなる」という制限が発生し、免税事業者は取引を打ち切られてしまう危機におちいる可能性があるということを説明しました。

では、インボイス制度を不動産賃貸業に具体的に当てはめると、どのような影響があるでしょうか。

「賃貸アパート等を購入する際、建物部分については消費税を払っているはずなので、インボイスを相手から受領することができれば建物価格の10%相当額の仕入税額控除ができるはず」、そう思ってしまうかもしれませんが、実はインボイス制度とは別に、賃貸用の住宅(※)は、仕入税額控除ができないという、(不動産賃貸業を狙い撃ちにしたような)特殊ルールがあるのです。
(※「居住用賃貸建物」と呼びます)


(参考 令和2年4月 消費税法改正のお知らせPDF 「Ⅱ」の項)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/r02kaisei.pdf


「居住用賃貸建物」はインボイスに関係なく仕入税額控除できない!
「インボイス制度により仕入税額控除ができなくなる」という以前の問題として、そもそも賃貸用の住宅(居住用賃貸建物※)は仕入税額控除ができないのです。


厳密には、「高額特定資産」(=支払対価が税抜1,000万円以上となる棚卸資産又は固定資産)や「調整対象自己建設高額資産」等に該当し、かつ賃貸用の住宅であるものが居住用賃貸建物になります。なので、建物の支払対価が1,000万未満の賃貸住宅は仕入税額控除の制限にはかかりません

さしあたり、今回の事例は建物の対価が1,000万円以上の場合を想定して解説します。

(例)
売価1億円の賃貸アパートを取得し、土地4,500万円、建物5,500万円に按分した。

建物には消費税が含まれているため、建物5,500万円の内訳は、

本体(税抜)5,000万円 + 消費税500万円

となります。

家賃収入という売上を上げるために、賃貸用の建物の仕入をしているので、その仕入れの際に消費税500万円を仕入先(売主)に支払っているということになります。

通常の仕入取引であれば、この仕入先に支払った500万円の消費税について、仕入税額控除として「消費税の納税額を減らす効果」又は「消費税還付」を受けることができるはずです。

しかし、上述の「居住用賃貸建物仕入税額控除が認められない」という特殊ルールがあることにより、仕入先に支払った消費税500万円について、消費税の納税額を減らす効果を享受する(または消費税還付を受ける)ことができないのです。


この「居住用賃貸建物仕入税額控除を受けることができない」という点で、賃貸住宅を仕入れて家賃を獲得するといった形態の事業(不動産賃貸業)は、一般的な事業者よりも消費税の負担を多くするので、税制上、不利なのです。


不動産賃貸業はインボイスを発行できるよう課税事業者になるべき?それとも免税事業者のままでいいの?
インボイス制度のポイントは、「仕入先からインボイスを受領できなければ仕入税額控除できず、当社の消費税の納税額が増えてしまう」というものでした。

しかし、アパートやマンション、戸建住宅といった住宅用の建物(居住用賃貸建物)を購入する場合、インボイスを受領しようがしまいが、もともと仕入税額控除ができないのです。

なので、自分がアパート、マンション等の賃貸住宅の買い手(お金を払う側)になる場合、インボイスがあってもなくても仕入税額控除できないので、「売主(お金を貰う側)がインボイスを発行してくれるかどうか」を気にする必要がありません。

逆も然りで、自分が売主(お金を貰う側)になる場合、買主(お金を払う側)に対してインボイスを発行しようがしまいが、買主は「居住用賃貸建物仕入税額控除NG」ルールにより、もともと仕入税額控除できないので、買主からインボイスの発行を要求されません。

(ただし、買い手が仕入再販業者(買取業者)のように、購入してからすぐ転売する事業者である場合、先方からインボイスの発行を要求される可能性はあります。別の回で説明します)


すなわち、居住用賃貸建物を売却する予定があるとしても、インボイスを発行できない免税事業者のままでいるということも選択肢として検討した方がよいということになります。

店舗や事務所等はインボイスの影響があることに注意!
なお、仕入税額控除不可なのは「居住用」の賃貸建物、すなわちアパートや戸建てのような住宅です。


住宅ではなく賃貸用の店舗や事務所といった、「家賃収入が課税売上となる建物」を購入するのであれば仕入税額控除を適用することができ、インボイスを受領することで消費税の納税額の減少の効果、又は消費税還付を受けることができます。(次回以降、詳しく説明します)

インボイスの影響(居住用賃貸建物の売買取引) まとめ
仕入税額控除、インボイス制度、居住用賃貸建物仕入税額控除不可の特殊ルールなど、様々な制度が複雑に絡むため頭がこんがらがってしまいそうになると思います。

ここで、不動産賃貸業を営む事業者が賃貸住宅を売買する場合について、「お金を払う側(買主)」「お金を貰う側(売主)」ごとに、インボイスの影響をパターン分けしてまとめてみました。

<C.自分が居住用賃貸建物を買う側(お金を払う側)の場合>

No. 自社:
お金を払う側
相手:
お金を貰う側
影響
C-1 課税事業者 課税事業者 影響なし。居住用賃貸建物は仕入税額控除できないので、売主にインボイスの発行を依頼する必要性なし。
C-2 課税事業者 免税事業者 影響なし。居住用賃貸建物は仕入税額控除できないので、売主にインボイスの発行を依頼する必要性なし。
C-3 課税事業者 一般消費者 影響なし。居住用賃貸建物は仕入税額控除できないので、売主にインボイスの発行を依頼する必要性なし。
C-4 免税事業者 課税事業者 取引相手がインボイス発行するかどうかにかかわらず、自社(免税事業者)は消費税の申告・納税をしないので影響なし。
C-5 免税事業者 免税事業者 免税事業者(相手)はインボイス発行できないが、自社(免税事業者)も消費税の申告・納税をしないので影響なし。
C-6 免税事業者 一般消費者 一般消費者(相手)はインボイスを発行できないが、自社(免税事業者)も消費税の申告・納税をしないので影響なし。

(なお、課税事業者は適格請求書(インボイス)発行事業者であるとする)

<D.自分が居住用賃貸建物を売る側(お金を貰う側)の場合>

No. 自社:
お金を貰う側
相手:
お金を払う側
影響
D-1 課税事業者 課税事業者 影響あり(※1,2)。居住用賃貸建物は仕入税額控除できないため、買主からインボイスの発行を要求されない。
D-2 課税事業者 免税事業者 影響なし(※1)。免税事業者(買主)は、元から仕入税額控除できないので、買主からインボイスの発行を要求されない。
D-3 課税事業者 一般消費者 影響なし(※1)。 (戸建てや区分マンションを実需向けに売る場合等)一般消費者は消費税の申告をしない。インボイスを要求されることがない。
D-4 免税事業者 課税事業者 影響なし。居住用賃貸建物は仕入税額控除できないので、買主からインボイスの発行を要求されない。
D-5 免税事業者 免税事業者 影響なし。免税事業者(買主)は、元から仕入税額控除できないため、買主からインボイスの発行を要求されない。
D-6 免税事業者 一般消費者 (戸建てや区分マンションを実需向けに売る場合等)一般消費者は消費税の申告をしないため、買主からインボイスの発行を要求されることがない。

(なお、課税事業者は適格請求書(インボイス)発行事業者であるとする)

(※1)D-1~D-3について、インボイスを先方に発行する必要はないが、自分(売主)は課税事業者なので、売却に関して建物価額×10/110相当分の消費税の納税が発生することに注意

(※2)D-1について、買い手が仕入再販業者(買取業者)のような、購入してからすぐ転売する事業者である場合、先方からインボイスの発行を要求される可能性があります。(別の回で説明します)

上記のC、Dの表を見て、お気づきになるかと思いますが、居住用賃貸建物に関しては、D-1で転売業者等に売却するケース(上記の※2)を除き、買う方も売る方もインボイスの影響がないということになります。


ゆえに、居住用賃貸建物しか保有していない大家(店舗や事務所等を保有しておらず、他の事業も行っていない大家)は、インボイスを発行できるようになるためにわざわざ課税事業者にならなくてもよい、という選択肢があると言えます。

課税事業者になってしまうと(上記のD-1~D~3のように)、売却時、建物の価格×10/110(建物総額の約9.09%)相当分の消費税を納めなければならなくなります。


よって、賃貸住宅のみを保有する大家は、買取業者等に売却することが想定されないのであれば、できるだけ消費税を納税する義務のない免税事業者のままでいる(D-4~D-6)か、もし不動産の売却をしてから2年後に致し方なく課税事業者になってしまう場合で、その年にもまた不動産の売却が発生して消費税の納税が発生してしまう場合、簡易課税を適用して消費税の納税額を60%オフにできるとよいでしょう。


(店舗や事務所などを保有している場合は仕入税額控除ができる余地があるので、インボイスを発行できるようになるため、免税事業者のままでいるべきか、課税事業者になるべきかを検討する必要があります。(別の回で解説します))

(参考)なぜ居住用賃貸建物は仕入税額控除NGなのか?
何故、居住用賃貸建物の仕入税額控除不可の特殊ルールがあるのかというと、もともと、賃貸住宅用の建物は別の理由(※)から仕入税額控除が難しかったのですが、消費税法のルールの穴を突くようなスキームを用いて賃貸住宅建物にかかわる仕入税額控除(=消費税還付)を受けようとする事例(いわゆる消費税還付スキーム)が多発したため、最終的に「居住用の賃貸建物の仕入税額控除は一律認めない」という形で、令和2年に改正されてしまったのです。

(※)非課税売上(家賃収入)に対応する仕入の消費税は控除できないという消費税の制度上の縛り。複雑なのでここでは割愛します。

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