所得税・法人税等

個人の減価償却で節税する難しさ| 減価償却で税をコントロール⑪

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前回

長期譲渡になってもすぐ売却する見込みはない場合(保有し続ける場合)
→建物への按分は多いほうが有利だがケースバイケース
売却する見込みがないのであれば長期譲渡所得の税金は関係ありません。
なので、できるだけインカムゲイン(不動産所得)に対する税金がかからないように減価償却費を多くとったほうがよいので、建物を多く計上するほうが有利となります。

ただし、下記の2点は気を付けたいです。
①減価償却費を多く計上しすぎて不動産所得が赤字になると、土地に対する借入金利子が切捨てられてしまう。
 不動産所得が赤字の場合、給与所得や事業所得の黒字と相殺(損益通算)することが認められているのですが、土地部分に対応する利子相当額は損益通算が認められないので、あえて赤字にはせず、土地の利息相当分だけ黒字が出る程度の減価償却になるように調整するとよいでしょう。

 あるいは、耐用年数オーバーの物件等では見積耐用年数を活用して、できるだけ長い期間で減価償却を計上できるようにして、毎年の所得額を安定化させることも検討するとよいでしょう。

②いつかは売却するかもしれない
 当初は売却する予定がなくとも、事情が変わって売却することになるかもしれません。
 減価償却費を多く計上しすぎて建物簿価が少なくなっていると、売却益に対する税額も多くなり、「物件の売却額 – 残債 – 税金」の手残りが少なくなってしまうということは留意しておきましょう。

個人の減価償却による節税の難しさ
任意償却できる法人と違って、個人の場合、減価償却による節税戦略は物件取得初年度にほぼ決まってしまいます

今まで説明した例は売却時にトントン、または売却益が出るという前提でのプランニングですが、逆に不動産価格の下げ相場では売却益が少ないか赤字になる場合もあるのでまた違った想定をしなければなりません。

もし値上がり(又はトントン)前提での減価償却費の計上の仕方をしていたのに、途中から相場の折り返しが来て物件価格が下がりだしたら、逆にトータルの税金が増えてしまうということもあり得ます

途中で償却額や償却方法を変えられないこと、これが個人における減価償却戦略の難しさであり、リスクなのです。

特に長期譲渡の場合5年超というかなり先のことで、その時の市況がどうなっているかわかりません。


「売却益がたくさん出ると皮算用して建物へ按分を少なくしたのに、高く売れなかったため長期譲渡のメリット(低税率)をほとんど受けれず、それどころか毎年の不動産所得の税金を増やしただけ」とならないように、出口(売却)の見積もりは保守的に見ておくようがよいと思われます。

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(次回、「5年経ったから長期譲渡だと思ったら…| 減価償却で税をコントロール⑫」に続く)