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所得税率を難しくする諸悪の根源は「総合課税」! | 「所得税の増加分」という概念で対応しよう


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前回、「額面年収1000万円の人の所得税の実効税率は8.3%になるのは、①所得控除により課税所得は633万円まで下がること、②累進課税によりトータルの税額は少なくることが原因」ということを説明しました。

一方で「年収1,000万のサラリーマンが不動産所得が100万円増加したとき、増加する所得税は約21万円」とも説明しました。


今回はその計算根拠について解説していきます。

「年収1,000万のサラリーマンの不動産所得が100万円増加したとき、増加する所得税は約21万円」になるのはなぜ?

年収1,000万円のサラリーマンの課税所得は633万円ということは、ここに100万円の所得がプラスされることで課税所得が733万円(633万+100万)になります。この733万円を税率表に基づいて税額を計算します。

課税される所得金額 税率
1,000円 から 1,949,000円まで 5%
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10%
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20%
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23%
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33%
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40%
40,000,000円 以上 45%

国税庁 タックスアンサーより抜粋

「633万円~695万円までは×20%」「695万円~733万円までは×23%」の税率で所得税が課されるので、約21万円が増加分となります。
(733万円で計算した所得税額と、633万円で計算した所得税額の差額でも同じです)

「100万円の所得の増加に対して21万円の増加」と言っても、「だから増えた分の税率は21%」と表現するのは早計です。これは、20%と23%の税率で計算した結果を足した結果21万円になっているというだけであって、21%の税率で税金が課されているわけではありません。

つまり、「所得が100万円増えたら21%で税金が増えていく」と税率で語ることはできず、「収入が100万円増えたときに、税金が21万円増える」と、増加する税額で表現をせざるを得ないのです。

そして、この「増加する税額は21万円」こそが、真の「個人と法人、どっちで売上を計上した方が税金が安くなる?」という判断に使用すべきものなのです。

税額の増加分を出すにも注意が必要。その原因は・・・
では、「収入が○○万円増えたときに、税金が○○万円増える」(以後、「所得税の増加分」と呼びます)をどうやって計算すればよいでしょう。

なんと所得税の増加分」は人によって異なり、個人ごとに全く違った結果になるという複雑さがあるのです。その原因は、所得税には「総合課税」という仕組みがあるせいです。

総合課税とは
所得税法では、所得の性質によって集計方法が分けられています。
給与をもらったら「給与所得」、家賃収入を得れば「不動産所得」、事業で稼げば「事業所得」。

それらを合算(&所得控除)して課税所得を計算し、その課税所得を税率表に当てはめて税額を出します。
このように複数の所得区分が合算されて課税されることを「総合課税」と呼びます

この総合課税があるせいで、不動産所得が増えた場合の所得税の増加分が人によって異なる結果になるのです。


例えば、給与所得や事業所得で何千万円もの所得があって、既に最高税率所得税45%が課されている人の場合、不動産所得が100万円増えたら、その100万円に対して課される税率も45%になります。

しかし、給与所得も事業所得もゼロでその他に総合課税に合算される所得もない人(つまり総所得金額ゼロ)の場合、不動産所得が100万円増えたら、その100万円に対して課される税率はたったの5%です。


複数の所得を合算する総合課税のせいで「不動産所得が増えとき、その所得に対して課される税率が人によって異なってしまう」ため、それゆえ所得税がいくら増加するかは各人で個別に計算しなければならないのです。


顧問税理士には「この物件を取得するなら法人と個人、どっちが有利ですか?」と聞くのではなく、「自分の不動産所得が○○万円増加したとき、増加する所得税は○○万円(所得税の増加分)」はいくらになりますか?と聞きましょう。

まとめ
「不動産投資で個人で増加する税金を考えるとき、どの税率を使えばいいのか」という問いに対する答えは

a.税率表で年収1,000万円は税率33%と書いてあるから税率33%だ 
→×不正解。そもそも所得の計算方法が間違っている(前回参照)

b.年収1,000万円の所得税の負担額は83万円だから税率8.3%だ
→×不正解。所得の増加分に対して、その税率で税金が課されるわけではない (前回参照)

c.今から追加で毎年100万円の所得が増える物件を買う予定だが、これによって増加する税金は21万円である。個人で物件を取得した場合の税率は21%だ。
←△惜しい。概念は正しい(=税額÷課税所得)。しかし、所得が増加していくときにこの税額で課されるわけではない。

・今から追加で毎年100万円の所得が増える物件を買う予定だが、これによって増加する税金は21万円である。
←〇正解。そもそも「税率」ではなく「税額」で判断するべき。

ということになります。

所得税の増加分」という概念を使えば新たに物件を取得しようとするときに、法人か個人かどちらで取得したほうが税金が少なくなるか(手残りが多くなるか)という判断がより正確にできるようになります。

なお、上記の「年収が1,000万円の人に不動産所得100万円が増えた場合、増加する所得税は21万円」というのは所得税だけを考慮した金額であって、このほか復興特別所得税(所得税額の2.1%)、住民税(10%)、事業税(事業の分類により税率が異なる)等も含めて総合的に考慮する必要があります。

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(次回「800万円の壁 | 法人税等の増加分の出し方」)