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【結論】結局、個人と法人ってどっちが得なの?|法人VS個人④

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前回まで「個人と法人、同じだけの所得が出たらそれぞれ税金がどれだけ発生するのか」ということを検証してきました。

具体的な金額で検証をした結果、それぞれ

【個人】
青色申告特別控除があるため最初は税額が増えにくいが、青色申告特別控除を使い切った後は累進課税の性質上、税金が増加するスピードが早い

【法人】
青色申告特別控除がない上に、均等割や税理士報酬といった固定費が掛かるがコストが嵩むが、税金の増加は緩やかである

という特色があるということがわかります。

これを踏まえて、不動産投資をするなら法人と個人、どちらで物件を取得していくほうがよいか、ということについて考えたいと思います。
なお、人それぞれ法人化に対するスタンスがあると思いますので、あくまで筆者の私見によることにご留意ください。

個人の稼ぎは自由なお金、法人の稼ぎは不自由なお金
法人化する意義について、「高所得者でないと法人化するメリットはない」等と言われることもあります。


それは、均等割や税理士報酬といった固定のコストや、法人で稼いだお金を個人へ移転ことを考えなければならないといったデメリットはあります。

その中でも特に、法人から個人への所得移転の際の税・社保負担は強力なデメリットです。

個人の不動産所得として得たお金は自由に使えるお金であるのに対して、法人で稼いだ利益は自由に使えない、いわば不自由なお金です。


それゆえ、法人から個人にできるだけ低負担でお金を移すための努力が必要になります。


不自由なお金がいくらあってもしょうがない、どうせ後で法人から個人へ所得移転する際に多額の税・社保を負担しなければ自由なお金にならないのならば、多少税金が高くても個人で物件を取得して、最初から自由なお金として獲得したほうがいいんじゃないか(=法人化の必要はないのではないか)、という疑問が出てくると思います。

それでもやっぱり法人化には意義がある

確かに、いつかは法人から個人への所得移転を考えなければならないというのは間違いありませんが、法人化してすぐにそれをしなければならないという訳でもありません。

個人でまだ本業の収入がある場合等、法人からの役員報酬が無くても生活ができるのであれば、しばらくの間は役員報酬は低廉もしくはゼロということもできます。

法人化をすると、法人から個人への所得移転で実質的な手取りが減るというデメリットがあるのは確かですが、法人化にはそれらのデメリットを補う効用があります。

それは、個人と比較して税率が低いため手残りが多くなり、それを再投資に充てて規模の拡大を早めることができるということです。

特に、法人の所得800万円までの税率、約21%~23%という低さは魅力です。

法人で800万円の所得が発生した場合、発生する法人税等は約 178 万円です

一方、個人本業の給与額面年収600万円~700万円の人が不動産所得800万円(青色申告特別控65万円を引いたら735万円)が発生した場合、でも約280万円の税金が追加で発生します。

これは限界税率で換算すると33%~35%となり、法人税の場合の21%~23%よりも10%以上高くなります。

(※ 限界税率:「増加する税額 ÷増加する所得」の率。不動産所得が800万円増えたときに、それに対して約280万円(約35%)の税金が追加で発生するということ。限界税率について詳しく知りたい方は下記を参照ください)

そして、給与額面年収1,000万円の人が不動産所得800万円が発生したら、なんと約300万~320万円もの税金(限界税率で約40%)が追加で発生します。

本業の年収が高くなればなるほど、法人化による低い税率を享受するメリットは高くなっていき、節税できた分、手元に残る現金が多くなります。

法人のメリットを享受して手元に残した現金を何に使う?
不動産投資は他の事業や投資と比べて「労働力の投入が比較的少ない」というメリットと「利回り(収益率)が低い」というデメリットがあります。

一般的な起業や個人事業の独立と比べれば、手間がかからない反面、そんなに儲からないということです。

そこで、「利回りの低さ」という不動産投資のデメリットを補うためには、規模を大きくすることが必要であり、すなわち規模拡大(与信が続く限り物件を取得し続けること)が重要になります。

やはり、どうしても手元現金が多いほうが融資も引きやすく、物件を取得しやすいということがあります。

2棟目、3棟目と個人で収益物件を取得し続けると、本業の給与所得と不動産所得が加わることで累進課税により税負担はどんどん重くなっていくため、個人での税負担が軽いゾーンを超えたら法人化して税負担を軽くし手残りを増やし、そのお金を次の物件の頭金として再投資(規模拡大)するスピードを上げる、という戦略が不動産投資家の規模拡大にマッチすると言えます。

また、銀行融資の視点でも、金融機関によっては「個人は借入金〇億円まで」といった上限があったりして、法人化しないと規模拡大の妨げになるという場合もあります。

個人で自由に使えるお金も大事ですが、規模拡大のためには融資の活用は必須です。いったん規模拡大を重視して法人でお金を貯めて、法人からお金を取り出すのは後から考えるというのでも遅くはありません。

法人所得800万円を超えたら?
法人は所得800万円までは税率21%~23%と低いですが、所得800万円を超えると一気に10%以上増加して、税率33.58%になります。

なので法人の所得が800万円を超えたら際には、その次の物件を取得する際には、法人の税率と個人の税率を改めて見直してみるとよいでしょう。


自由に使えるお金を増やすという意味では、個人と法人で税負担があまり変わらなければ、個人で取得したほうが効率がよいからです。(法人から個人への所得移転の手間や、給与で支給したときの税・社保負担がないため)

所得(純利益)800万円というと、物件の利回り、構造(木造/RC)や建物比率や築年数等で減価償却費がいくらになるかにもよりますが、例えば新築や築浅物件メインだと資産規模2億~4億くらいのゾーンでしょうか。


それくらいに規模拡大して、安定してまとまったキャッシュフローが入るようになったら、法人から個人への所得移転を考えはじめてもよいかもしれません。

物件の特徴ごとに法人と個人で使い分けることも有効
また、個人の場合、長期譲渡所得だと税金が安い(20.42%)というメリットがあります。

そのため物件によっては、不動産所得の税率が高くても個人で取得する方がよい場合もあります。

例えば個人の本業の給与収入が高く税率が高いハイスペサラリーマンや、個人で物件を取得したことで不動産所得によって税率が高くなった人の場合、減価償却を多くとれる(建物部分を多くできる)築古物件等を個人で購入して、減価償却費で不動産所得を赤字にして個人の所得を減らすことは有効です。


例えば、個人で最高税率(約55%)が課されている人は、赤字にした金額分についてその55%が税還付されます。(土地部分の借入金利子は除く)


減価償却費を多くすると売却する際に売却益が増えてしまうので、意味がないように見えますが、売却益には長期譲渡の場合の低い税率(20.42%)が適用されるため、差額のおおよそ35%が節税になります。


売主が消費税の免税事業者で、売買契約書に記載する土地建物の比率にこだわりがない場合、建物比率を多くする(減価償却を多くとる)チャンスです。

そういった状況が揃っている場合は、個人で取得したほうがよいという判断もあるでしょう。


本業の税率がいくらか、物件の性質(売却の予定があるか、償却費はいくらか、賃料収入による所得の増加分はいくらか)によって、個人・法人、どちらで取得すべきかを使い分けるということを考慮したいところです。

相続対策としての法人化の意義
「自由に使えるお金を増やすのであれば、個人と法人で税負担があまり変わらなければ、個人で取得したほうがよい」と言いましたが、相続のことを考えるとまた違った見方があります。

法人で取得した場合、相続されるのは不動産ではなく法人の株式(自社株)であり、自社株の評価額が相続税の計算根拠になります。

そして自社株の評価(株価)はコントロールできる余地があり、また財産の分割の仕方の方法も多様になることで、相続税対策の幅を広げることができるのです。

まとめ
法人化をするのであれば意識しておきたいポイント

①税率が高くなるまでは個人で物件取得をする

②「給与所得+不動産所得」が多くなり個人の税率が高くなってきて規模拡大の妨げになってきたら、法人で物件取得していくことで税率を抑えて、個人への所得移転よりも事業規模拡大を優先する

③ある程度の規模のキャッシュフローが生まれる体制が整ってきたら、法人から個人への所得移転の方法を考える。

④個人の税率が高い人は、減価償却による赤字を通算して税還付を受けて、売却時には長期譲渡所得(20.42%)の低税率を享受するという方法もある。

⑤年齢によっては相続対策としての法人化も併せて考える

以上、完全に著者の私見なので、人によっては違う考えもあると思います。

とりあえず、「法人、個人どっちが得なの?」という問いに対しては「人、物件、所得その他状況による」「個人で自由にできるお金がすぐ欲しいか、規模拡大を優先するか、その人の考え方による」、「相続のことを考えているか」等、つまり結論として「どっちが良いとは一概には言えない」ということが分かって頂ければ幸いです。

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