所得税・法人税等

株式会社 or 合同会社? どっちがいいの?

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事業が軌道に乗ってきて、「個人の所得も高くなってきたし、次の物件を取得する際は法人化をしようか」となれば、いざ法人の設立手続きに進みましょう。


その際に、「法人の形態」と「資本金をいくらにするか」を決める必要があります。

今回は「法人の形態」を決める際、「株式会社と合同会社、どちらにすべきか」について、それぞれメリット・デメリットを説明します。

株式会社
「株式会社」に関するメリットは下記の通りです。

株式会社のメリット
①所有と経営の分離
株式会社は、経営者(役員)株主(=会社の所有者、出資者)を分けることができるというのが強みです。

相続対策等で子供や配偶者を株主(会社のオーナー)にして、事業経営は自分が行うといったことが可能になります。

②資本的多数決
株式会社では、会社の経営にかかわる重要なことは株主を集めて「株主総会」という会議体を開き、多数決で賛成/反対の決議をします。

そして、株主総会では株式数に応じて株主総会の議決権が与えられます。つまり株式を多く持っている人が強いのです。これを「資本的多数決」といいます。


そのため議決権の過半数(50%超)を保有している人がいれば、その人単独で会社経営の重要な議題に関して決定する権限を持つことになります。

相続対策として、創業者(自分)は株式の51%を保有して経営に関する権限を確保し、配偶者や子供に残りの49%を持たせて資産を相続させるという方法等が用いられることがあります。
(議決権の3分の1以上、つまり33.3%超を持っていると一定の事項(特別決議)に対する拒否権が発生するため、創業者は66.7%を保有しておくべきという考え方もあります)

あるいは、子供に99%の「無議決権株式」を保有させ、自分は1%の議決権のある普通株式を持つという手法など、「議決権の有無や数をコントロールする」ことで相続対策に活用することができます。

③「株式会社」「代表取締役」のネームバリュー
やはり何と言っても、「株式会社」という名称が認知度が高いということは強いです。
後述する「合同会社」という名前を聞いたこともない人は多いと思います。
また、株式会社の代表者は「代表取締役」です。
これも合同会社だと「代表社員」という肩書きになり、代表取締役と比べると認知度は落ちます。

株式会社のデメリット
設立費用が合同会社より高い(21~25万)
②決算情報を「官報」に公告する必要があり、その手間と費用がかかる
③役員の任期が2~10年。その任期のたびに役員の再任の手続き(登記)が必要になる

主に、会社の設立時やランニングコストが合同会社より高い、手間がかかるというのが株式会社のデメリットです。

合同会社
知る人ぞ知る「合同会社」。2006年に施行された新会社法で導入された比較的新しい法人の形態です。(実は通販のAmazonの日本法人も「アマゾンジャパン合同会社」です)


なお、税制に関しては株式会社も合同会社も同じなので、合同会社だからといって特別な節税ができるという訳ではありません。税理士報酬や均等割も同様にかかってきます。

合同会社のメリット
①設立費用が株式会社より安い。(最低6万)
②決算情報を官報に公告しなくてよいため、その公告コストがない。
役員の任期ないので、その手続きの手間や登記コストもない。(株式会社は定期的に役員の再任の決議をして登記をする必要がある)

合同会社のメリットは、株式会社のデメリットの真逆です。
「設立費用が安い」「会社のランニングコストや手間がかからない」ということです。

デメリット
①必ず出資者=経営者となる。(所有と経営の一致)
株式会社は、会社の所有者と経営者を別の人にすることができました。(所有と経営の分離)
合同会社では、会社の所有者(出資者)は必ず経営者となる必要があります。

なので、もし新たに役員を増やしたい場合は出資者となってもらう必要があり、「出資持分(株式)だけを譲渡したい」「出資者にはなってほしくないが、役員にはなってほしい」といったことができず、会社の支配権のコントロール等の会社の設計に関して、株式会社よりも柔軟性に劣ります

相続対策等で、出資持分(株式)を柔軟に移動させたいニーズがあるのであれば、株式会社のほうが向いているかもしれません。

②「出資額(持分)にかかわらず1人1議決権」のため意見が対立すると厄介
株式会社では経営に関する意思決定は「株式数に応じた議決権(資本的多数決)」でしたが、合同会社では「人の数による多数決」です。

なので、相続対策として、合同会社の持分を配偶者や子に持たせるために、名義だけのつもりで会社経営者として配偶者や子を参画させたところ、意見の不一致が起きてしまい、予定していた経営上の意思決定(例えば新たな物件の取得や銀行からの借入)ができない、といったことが理論上起こりえます。

合同会社で、自分単独で経営意思決定できるような体制を維持したい場合は、出資者は自分一人だけにすべきです。

③ネームバリューがない
「合同会社」という名称を知らない人も多いですし、「代表取締役と呼べない」というのも大きいです。(合同会社は「代表社員」)
また、「役員」という肩書に相当するものが、合同会社では「社員」となります。

④1人だけの合同会社で、その人が死亡してしまうと自動的に解散になってしまう
合同会社は株式という概念がないため、代表社員が死亡した後、株式を相続するということができません。そのため、代表社員1人だけの合同会社は、代表社員が死亡すると解散となってしまします。

ただし、あらかじめ下記のような条項を定款に入れることで、出資持分を相続人に引き継がせることが可能ですので、入れておくことをおすすめします。


(相続及び合併による持分の承継)
第◯条 社員が死亡し又は合併により消滅した場合には、当該社員の相続人その他の一般承継人は、当該社員の持分を承継して社員となることができる。


その他の会社形態について(株式会社、合同会社以外)
「株式会社」と「合同会社」のほかに、「合名会社」と「合資会社」という形態もあります。

しかし、それらの会社には「無限責任社員(法人の負債の返済義務が出資者個人の財産まで及ぶ)」を入れる必要があるので、多額の負債を負う不動産賃貸業には不向きと考えられます。

まとめ
合同会社は設立コストやランニングコストが低いので事業規模の小さい初期に法人を設立する人向きですが、経営と出資持分(≒株式)を分けることができず、相続を見越した法人運営としては柔軟性に欠ける点があります。

なので、合同会社を選択する場合、自分1人が経営の決定権を握っておく必要があるのであれば、家族に出資持分を持たせず経営にも参画させないようにしましょう。
また、死亡した際に自動的に解散しないような条項を忘れずに入れておきましょう。

一方で、株式会社は設立コストやランニングコストがかかる分、所有と経営の分離という相続対策向きの機能があり、「経営には関与させずに、会社の所有持分を家族に渡すことができる」ということが可能になります。

設立コストやランニングコストを考え最初は合同会社で設立→ある程度お金に余裕が出てきて相続対策等で株式だけを家族に渡しておきたい等のニーズが出てきたら、新たに別の株式会社を設立する、というのもよいかもしれません。(合同会社を後から株式会社に変更することもできます)


もちろん、「代表取締役」の肩書が欲しいから最初から株式会社を選ぶというのでも問題ありません。

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(次回「資本金はいくらにしたらいいの?」へ続く)