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(前回)
借上社宅は優秀な節税&所得移転方法
役員(社長)が賃貸に住む場合、その家賃を利用して、節税しつつ法人から個人への所得移転することができます。
通常、個人の住居費は個人のプライベートな財布から払うものなので、原則は役員報酬として受け取ったお金から家賃を払うことになります。
しかし、その住宅を法人で賃貸契約して個人(役員)に転貸すれば、役員個人の家賃を法人の経費にすることができるのです。
役員報酬として所得税・住民税・社保を払った後の手残りの中から家賃を払うよりも、法人で社宅として支払って経費にして、その家賃相当分を役員報酬から減額すれば税・社保を削減することができます。
法人が費用を負担して、個人でも効用(住宅に住むこと)を享受することができる。つまり「経費化」を利用した、疑似的な法人から個人への所得移転となります。
なお、個人から法人に対して社宅家賃を納める必要がありますが、本来の家賃の金額と比べればかなり低廉な金額(おおむね相場の10%程度)となっているので、社宅を利用することで、本来経費にできない自宅の家賃(の約90%程度)を経費にしつつ、法人から個人へ所得移転できるということになります。
個人で享受する賃料補助相当分が非課税になる
例えば家賃20万の部屋を借りる場合を想定して、給与(役員報酬)で家賃相当分を支給した場合と、社宅にした場合の違いは以下のようになります。
①個人で賃貸契約する場合
法人から個人(役員)に家賃補助として現金で20万円を支給し、個人は20万円の家賃を大家に払う場合
→20万円は給与として所得税・住民税が課税され、さらに社保もかかります。
②法人で賃貸契約して個人に社宅として貸付た場合
法人は大家に20万円払い、個人(役員)は4万円を社宅の家賃として法人に支払う。
→20万と4万の差額の16万円が家賃補助相当分となります。この16万円について「給与」ではなく「福利厚生費」(受け取る側で所得税や社保が課されず、個人でも所得税等が課されない)で計上することが可能です。
社宅家賃の最低負担額に注意
法人で賃貸契約をして役員に社宅として貸付をする場合、一定の金額(「賃料相当額」)を本人から社宅家賃として徴収する必要があります。
もしこの「賃料相当額」を徴収しない場合は、その金額分が給与として個人で所得税(および社保)等が課されるので注意してください。
賃料相当額の計算については「固定資産税×0.2%」とか、かなり細かく指定がありますので詳細は国税庁のホームページ(下記)をご参考にするか、顧問税理士にご確認ください。
タックスアンサー No.2600 役員に社宅などを貸したとき
社保にも最低負担額があるので注意!
社宅は社会保険にも影響してきます。
都道府県によって基準は違いますが、東京都の場合、1畳(1.65㎡)あたり2,830円(令和3年時点)が「現物給与」として支給したとみなされ、社保の計算(標準月額報酬)に加算されます。
ただし、本人が負担した賃料相当額は現物給与から控除します。上記の場合、本人が1畳あたり2,830円以上負担していれば社会保険は増えませんので、本人負担分はそれ以上の金額に設定することをおすすめします。
「 1畳あたり〇〇円」で設定されているので、面積あたりの坪賃料が高い場所(つまり都心の一等地など)のほうが、本人負担分の割合が少なくなります。
法人で社宅を購入する方法もある
上記の例は住宅を賃貸物件を借りて役員に転貸する方法ですが、法人で購入した物件を貸し付ける方法もあります。
その場合は、個人で取得した場合は計上できない費用(減価償却費や固定資産税、その他諸費用)を計上できるというのがメリットとなります。
特に不動産投資家の場合は、所有物件に空いている部屋などがあればそれを社宅化するという選択肢もあっても良いかもしれません。
ただし、法人は住宅ローンが利用できないこと、住宅ローン控除や3,000万円も適用されないこと、個人でマイホームを売却するときは消費税がかからないが、法人の場合は課税対象になるということ等、総合的に比較したいところです。
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(次回、「家族への給与支給|法人から個人への所得移転⑤」に続く)