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社会保険料の脅威|法人から個人への所得移転⑬

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前回、自分が代表を務める会社で自分の役員報酬の金額を考えるにあたって、社会保険料の負担は避けられないということを説明しました。

今回は、社会保険料の基本的な考え方について説明します。

社保の負担は非常に重い
まず第一に、「社会保険料は高い」ということを認識しなければなりません。
社会保険料の料率は下記の通りです。

(中小企業が加入する「協会けんぽ(全国健康保険協会)」で東京都の場合。令和4年1月時点)

40歳未満の場合
健康保険料   :9.84%
厚生年金保険料:18.30%
合計 :28.14%

40歳超の場合
健康保険料   :11.64%
厚生年金保険料:18.30%
合計 :29.94%


https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r3/ippan/r30213tokyo.pdf


なんと「健康保険」と「厚生年金」2つ合わせて30%近くになる、ということがわかると思います。驚きですね。

ちなみにこれは、給与の金額そのものに上記の料率を掛け算するのではなく「標準報酬月額」というものに上記の料率を掛けて計算します。

「月給290,000円~310,000円の人は、標準報酬月額300,000円とする」というように一定のレンジ内でまとめて決定されるため、額面給与に対する実質負担率(「社保÷月給」)は上記の率(28.14%や29.94%)とは若干変動します。(30%を超える場合もあります)

サラリーマンの場合、上記の社会保険料を会社と本人で半分ずつ折半するので本人負担分は14~15%になります(労使折半)。

ところが、1人会社のオーナーの場合、会社負担分も自分で負担しているのと変わりないので、サラリーマンの2倍の負担となってしまうのです。

オーナー経営者にとって、自分に支給する給与は額面にかかわらず、社会保険料だけでだいたい30%は取られると考えてください。

社保の重さを実感しよう
「社保の負担は重い」、そして、「オーナー経営者が自分に給与を支給する場合は社保の負担が実質2倍」ということを具体的な数字を挙げて計算したいと思います。

①サラリーマンの場合の年収600万円の人の社会保険料の計算
前提: 年齢40歳~64歳
給与は年収600万円を12か月で等分(年俸制。月給50万円)
健保の標準報酬月額:500,000円
厚生年金の標準報酬月額:500,000円

社会保険料だけでも91万円も払っていますね。
「社会保険料」という名目ですが、実質税金のようなものです。
(実際、個人事業主が加入する国民健康保険の正式名称は「健康国民保険」で、滞納したときは国税徴収法等が準用されるガチの税金です)

このほかに、所得税と住民税を払うのですから大変な負担です。

実は額面年収900万円~1000万くらいまでは、所得税+住民税の金額よりも社会保険料の方が高いのです。(家族構成(配偶者控除や扶養控除等)により変わりますが)

②自分の法人から年収600万円の役員報酬を受け取っている人の社保、所得税、住民税の負担
前提: 年齢40歳~64歳
給与は年収600万円を12か月で等分(年俸制。月給50万円)
健保の標準報酬月額:500,000円
厚生年金の標準報酬月額:500,000円


(※経営者は雇用保険に入れないので、雇用保険料はゼロとなります)

サラリーマンの場合でも年間91万円も社会保険料を払っているのに、オーナー経営者にとっては会社=自分なので、会社負担分も実質自腹になって金額が2倍になり年間181万円の負担になります。

また、「子ども・子育て拠出金」という聞きなれない項目がありますが、これは本人負担分なし、会社のみ負担する項目です。給与明細に載ってこないので認識しないと思いますが、実は会社はこのような負担もしていたのです。

サラリーマンの目線だと給与=額面給与と見てしまいがちですが、会社から見た「人件費」というのは社会保険料の会社負担分込みの金額なのです。

サラリーマンの場合だと、額面給与900万~1,000万円までは、「社会保険料 > 所得税+住民税 」でしたが、オーナー経営者の場合は額面給与1,500万円くらいまで「社会保険料 > 所得税+住民税 」の状態が続きます。


あらためて、社保の凄まじさに驚きますね。

単に「給与を計上して法人税を減らしたい」「給与所得控除を使って所得税も減らしたい」だけを考えて自分に給与を多く支払ってしまい、元々高い社保が2倍になって大損するという可能性もあるので注意しましょう。

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(次回「社保の基本「標準報酬月額」|法人から個人への所得移転⑭」続く)